家賃の入金確認・督促電話をAI架電で自動化する方法|架電の時間帯・言い回し・記録の注意点と、人へ渡す線引き

2026.09.18監修:株式会社Rabona AI 代表取締役 鳥邉 翔

この記事は、賃貸管理会社で家賃の入金管理や滞納の初期対応を担当している方、保証会社と督促を分担している管理会社の方に向けて書いています。家賃の督促電話は、件数が読めず、担当者の心理的な負担が大きく、時間帯の配慮も必要な業務です。その一方で、初回の連絡に限れば話す内容はほぼ決まっています。この記事では、督促電話のどこまでをAI架電に置き換えてよいか、架電の設計と会話例、人へ渡す線引き、法令上の注意点を整理します。

結論から言うと、初回の「入金確認のご連絡」と支払い予定の聞き取りまでは定型の業務で、AI架電に置き換えられます。支払い方法の交渉、分割の合意、法的手続きの予告は人が行います。架電は朝8時から夜9時の範囲に限定し、名乗り・用件・折り返し先を固定の文言にし、全通話を録音と文字で残します。この4点を守れば、担当者の架電時間を減らしながら、記録の抜けをなくせます。


家賃の督促電話は、どこまで自動化してよいのか?

督促の業務を時系列で分けると、次の4段階になります。

段階内容担い手
1. 入金確認の連絡引き落とし不能や未入金を知らせ、行き違いの有無を確認するAI架電で可
2. 支払い予定の聞き取り支払い予定日と方法を聞き、記録するAI架電で可
3. 支払い条件の交渉分割、猶予、保証会社への引き継ぎ判断人(管理会社・保証会社)
4. 法的手続き内容証明、契約解除、明け渡し弁護士・保証会社

1と2は、誰がかけても話す内容が同じで、聞き取る項目も決まっています。ここがAIの領域です。3以降は判断と合意を伴うため、人が担います。管理会社がオーナーから受託している範囲で行えるのは入金確認と支払いのお願いまでであり、債権回収の交渉を業として行う場合は弁護士法第72条との関係が問題になり得ます。どこまでを管理会社が行うかは、管理委託契約と顧問弁護士の確認を前提にしてください。

督促の架電を自動化した公開事例はあるのか?

あります。AI Messenger Voicebotの公式事例では、家賃滞納者に対する督促架電をボイスボットで自動化し、毎月約5,000回の架電件数増加につながったと公表されています。人が1件ずつかけていた電話を機械が一斉に打つことで、初回連絡の到達率を上げた例です。このほか、AI架電ロボット催促君のように督促架電に特化した製品や、NTT東日本のコラムが紹介する不動産管理向けのAI自動応答など、督促と入金確認を自動化する選択肢は複数出てきています。日本情報クリエイトのコラムでも、家賃の請求・督促・入金処理をAIと自動化で一元管理する流れが解説されています。

ただし、公開事例の多くは「架電件数が増えた」までで、回収率がどれだけ上がったかは公表されていません。導入の目的は「人がかけられなかった初回連絡を全件に打つ」ことに置き、回収率は自社の数字で追うのが現実的です。

AI架電の設計で決めることは何か?

1. 誰に、いつかけるか(対象の抽出条件)

架電対象は管理システムの入金データから機械的に抽出します。たとえば「口座引き落としが不能になった翌営業日」「振込期日から3営業日後に未入金」のように、日数で条件を決めます。行き違いの電話を減らすには、入金反映のタイムラグ(金融機関からのデータ到着が翌営業日になるなど)を条件に織り込みます。初回は条件を後ろ寄りにして、行き違い率を見ながら前に詰める方が、入居者との関係を損ねません。

2. 何時にかけるか(時間帯)

貸金業法と同法施行規則は、貸金業者の取立てについて午後9時から午前8時までの時間帯を原則として禁じています。この取立規制は家賃の督促に直接適用される法律ではありませんが、実務ではこの時間帯を避けるのが安全です。当社では、家賃の入金確認の架電は平日と土曜の朝8時から夜9時の範囲に限定し、日曜と祝日は運用ルールで止めることを推奨しています。深夜早朝の架電は、内容が穏当でも不法行為と評価されるおそれがあります。

3. 何と名乗り、何と言うか(固定の文言)

名乗りと用件は固定の文言にします。例を挙げます。

「株式会社〇〇管理の自動音声でご連絡しております。〇〇様のお住まいの〇月分のお支払いについて、確認が取れておりませんので、ご確認のお電話です。行き違いでお支払い済みでしたら、お支払い日をお聞かせください。」

「滞納」「未払い」「催告」といった言葉は、初回の連絡では使いません。用件は「お支払いの確認」に統一します。番号は会社の代表番号か管理部門の番号を通知し、折り返し先も同じ番号を案内します。冒頭でAIによる自動音声であることを伝えると、聞き取りへの協力を得やすく、詐欺の電話と誤解されにくくなります。

4. 何を聞き取るか(項目を3つに絞る)

項目を増やすと通話が長くなり、途中で切られます。初回の架電は1分以内に収まる設計にします。

5. 出なかったときにどうするか(留守電と再コール)

留守番電話には「株式会社〇〇管理からお支払いの確認でお電話しました。折り返しは〇〇番までお願いします」と、社名・用件・折り返し先だけを固定文言で残します。金額や滞納の事実は留守電に残しません。同居者が聞く可能性があるためです。再コールは時間帯を変えて2回まで、それでも不通なら担当者へ「不通」として通知し、書面やSMSでの連絡に切り替えます。

実際の会話はどう進むのか?

初回架電で起きる典型的な3パターンを示します。物件名や人名は架空です。

パターン1:支払い済みの行き違い

AI「〇月分のお支払いについて確認が取れておりませんので、ご確認のお電話です。」
入居者「先週振り込みましたよ。」
AI「ありがとうございます。お振り込みの日にちをお聞かせいただけますか。」
入居者「たぶん9日です。」
AI「〇月9日にお振り込みですね。確認のうえ、行き違いでしたら失礼いたしました。ご対応ありがとうございました。」

AIは「未入金です」と断定しません。聞き取った支払日は担当者に通知され、入金データと照合します。

パターン2:支払い予定を答える

入居者「すみません、給料日の25日に払います。」
AI「〇月25日にお振り込みの予定ですね。お支払い方法は銀行振込でよろしいでしょうか。」
入居者「はい。」
AI「承知しました。〇月25日、銀行振込で承りました。ご連絡ありがとうございました。」

予定日は記録され、期日を過ぎても未入金なら、次は人が連絡する運用にします。AIによる再架電を繰り返すと、督促の回数が過剰になります。

パターン3:分割や猶予の申し出(人へ渡す)

入居者「今月は厳しくて、半分ずつにしてもらえませんか。」
AI「お支払い方法のご相談ですね。担当者からご連絡いたしますので、ご希望の時期をお聞かせください。」
入居者「今月末と来月10日で。」
AI「今月末と来月10日のご希望として担当者に申し伝えます。担当者から改めてご連絡します。」

AIは条件を提示も承諾もしません。希望は記録して、担当者が契約と保証会社の規程に沿って折り返します。

人へ渡す線引きと、通知・記録はどう設計するか?

AIから人へ渡す条件を、事前にリストにしておきます。

これらは通話の途中でも「担当者からご連絡します」で切り上げ、内容を通知します。通知先はLINE WORKS・Slack・メールのいずれかで、通話ごとに録音と文字起こし、聞き取り項目(支払い予定日・方法・行き違いの有無・人へ渡す理由)が届く形にします。管理システムやCRMに連携すれば、入居者ごとの連絡履歴として残ります。督促の記録は「いつ、誰が、何を伝えたか」を後から示す証拠になるので、音声とテキストの両方を残す設計が前提です。

保証会社と管理会社の分担はどう決めるか?

家賃債務保証を利用している物件では、保証会社が代位弁済した後の督促は保証会社が行うのが一般的で、管理会社の連絡はそれより前の「入金確認」に限られます。保証会社によっては、管理会社からの連絡そのものを控えるよう求める規程を持つところもあります。国土交通省の家賃債務保証業者登録制度では、登録業者に対して求償権の行使に関する基準が定められており、保証会社側の督促はその枠内で行われます。管理会社が独自にAI架電を入れる場合は、保証委託契約と管理委託契約を読み、どの時点までを管理会社が連絡してよいかを確認したうえで、架電の対象と文言を決めてください。分担が曖昧なまま両者が架電すると、入居者から見て督促が二重になり、苦情の原因になります。

法令とマナーで押さえるべきことは何か?

導入はどう進め、何をKPIにするか?

  1. 直近3か月の督促連絡を棚卸しする。初回連絡の件数、担当者1人あたりの架電時間、つながった率、行き違いだった率を出します。
  2. 契約と分担を確認する。管理委託契約・保証委託契約を読み、管理会社が連絡してよい範囲を決めます。
  3. 文言と線引きを固定する。名乗り、用件、留守電の文言、人へ渡す条件をリストにします。
  4. デモで応対音声を聞く。日付の復唱、支払い方法の聞き取り、分割の申し出を受けたときの切り上げ方を確認します。
  5. 1棟・1か月分から始める。結果の通知先を決め、行き違い率と折り返し率を見ながら対象を広げます。

KPIは3つで足ります。初回架電でつながった率(到達率)、初回架電で支払い済みか支払い予定が判明した率(判明率)、担当者が督促にかけた時間です。回収率はオーナーや保証会社との分担に左右されるため、AI架電単独の指標にはしません。

電話の受け方を含めた管理会社の電話業務全体の整理は、賃貸管理会社の電話対応をAIで自動化する方法管理会社の電話が減らない理由と減らす方法にまとめています。費用の考え方は電話代行とAI電話の費用比較を、夜間の受電設計は夜間の設備トラブル電話の受付フローを参照してください。入居者からの折り返し電話をAIが受ける仕組みは賃貸管理AIコールセンターくんで提供しています。

よくある質問

家賃の督促電話をAIにやらせても法律上問題ありませんか?

入金の確認と支払いのお願いを、オーナーからの管理受託の範囲で行う限り、AIが話すこと自体を禁じる法律はありません。ただし、支払い方法の交渉や分割の合意、法的手続きの予告を管理会社が業として行うと弁護士法第72条との関係が問題になり得るため、AIの役割は「入金確認と支払い予定の聞き取り」までに限定します。架電時間は貸金業法の取立規制が定める午後9時から午前8時を避ける基準を目安にし、脅迫的な言い回しや第三者への告知はしません。契約書の督促条項と保証会社との分担は、導入前に顧問弁護士か保証会社に確認してください。

入居者が「もう払った」と答えた場合、AIはどう対応しますか?

支払日と支払い方法(振込・引き落とし・コンビニ払いなど)を聞き取り、「確認のうえ、行き違いでしたら失礼いたしました」と伝えて通話を終えます。その内容は文字起こしと録音とともに担当者へ通知され、担当者は入金データと照合します。AIがその場で「未入金です」と断定することはなく、入金の判定は必ず人と管理システムが行います。行き違いが多い場合は、架電対象の抽出条件(未入金から何日目に架電するか)を後ろにずらすことで減らせます。金融機関からの入金データの反映が翌営業日になる場合は、その日数も条件に織り込んでおくと、支払い済みの入居者への架電をほぼ防げます。

分割払いや支払い猶予を申し出られたときはどうなりますか?

AIは条件を提示せず、「担当者からご連絡します」と伝えて通話を終えます。申し出の内容(希望の時期や金額)は聞き取って記録しますが、合意はしません。支払い条件の変更はオーナーや保証会社の判断が必要で、口頭で安易に応じると後の回収に影響するためです。通知を受けた担当者が、契約と保証会社の規程に沿って折り返します。分割や猶予の申し出があった件は、その後のAIによる再架電の対象からも外し、人が対応中の入居者に機械の電話が重ならないようにします。記録には申し出の内容と日時を残します。この線引きを守ることが、AI架電を安全に使う条件です。

保証会社が督促する契約でも、管理会社がAI架電をしてよいのですか?

契約によります。家賃債務保証を利用している物件では、代位弁済後の督促は保証会社が行うのが一般的で、管理会社の架電はそれより前の「入金確認のご連絡」に限られることが多いです。保証会社によっては管理会社からの連絡自体を控えるよう求める場合もあります。導入前に保証委託契約と管理委託契約を読み、どの時点までを管理会社が連絡してよいかを確認し、その範囲でAI架電の対象と文言を決めてください。保証会社と管理会社の両方が架電すると入居者から見て督促が二重になり、苦情や信頼の低下につながるため、分担を文書で決めてから運用を始めることをおすすめします。

架電の結果はどこに残りますか?

通話ごとに録音と文字起こしが残り、支払い予定日・支払い方法・行き違いの有無といった聞き取り項目は構造化されたデータとして記録されます。結果はLINE WORKS・Slack・メールなどに通知でき、管理システムやCRMに連携すれば入居者ごとの履歴として参照できます。督促の記録は後日の紛争で「いつ、誰が、何を伝えたか」を示す証拠になるため、音声とテキストの両方を残す設計にしておくことをおすすめします。録音と文字起こしは個人情報にあたるので、保管期間と閲覧できる担当者の範囲を社内規程で決めておく必要があります。

賃貸管理AIコールセンターくんで督促の架電もできますか?

賃貸管理AIコールセンターくんは入居者からの電話をAIが一次受けする受電のサービスです。家賃の入金確認のような架電は、当社が反響AIコールくんやAIテレアポで提供している自動架電の基盤で対応します。受電と架電を同じ会社で運用すると、入居者からの折り返し電話をAIが「先ほどお支払いの確認でお電話しました」と受け止められるため、行き違いの処理が一本化できます。まずは架電の対象件数と月あたりの回数、保証会社との分担をお伺いし、名乗りや文言を含めた運用の型をご提案します。応対音声はデモでお聞きいただけます。


この記事は反響AIコールくん運営チーム(株式会社Rabona AI)が、公開されている一次ソースと当社の運用実務をもとに作成し、音声AIの開発・運用実務の観点から監修しています。法令に関する記述は一般的な整理であり、個別の運用は顧問弁護士・保証会社にご確認ください。更新履歴: 2026-09-18 初版公開。

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